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エディー・キャッチ

 
小歩危・森囲いの呪縛

[歩危ページ]

 年内にもう一度くらい小歩危に行きたいと思っていたけれど、風邪が治りきっていないときに運悪くお誘いを受けた。「体調が良くなれば行きます」と取りあえず返事した。
 小歩危には準備万全で望まなければならない。ちょっとでも不安要素があれば、それが命取りになる。明日はやっぱり止めておこうと思いながらも、行く・行かない、私の気持ちは揺れ動いた。
 しかし、体調は良くなった。いや、良くなっていると自分で思い込んでいるのかもしれない。恐いもの見たさ(やりたさ)?逃げてはならないという意地?

 当日は晴天ポカポカで、寒い季節のなかで絶好のカヤッキング日和となった。でも、身体が何となく重い。よく考えてみると、下半身を拘束されたような状態で激流下りをするというのは、拷問にも似た行為だなと、ふと思った。

 冬はどこの川も水量が少なく、それでも面白いところといえば、小歩危くらいになってしまう。普段は他の川で楽しく漕いでいても、冬になると恐いと思いながらも小歩危に来てしまう。
 とはいっても、小歩危でも冬は水量が少なく浅くなり、激流のなかで沈してしまうと川底の岩と激突しやすくなる。

 カヤブキの瀬。
 歩危常連組は激流の中で巧みにエディーを取っているものの、私は何となくミスしてバランスを崩し沈してしまいそうなので、無理をせず一気に下り抜けてしまった。こんな気持ち、技量の無さでは、先は思いやられる。

 プレイスポットの「鉄橋の瀬」。
 歩危常連組はホールの中でカヤックをグルグル縦回転、カート・ホイール遊びしている。
私はというと、ホールに飲まれて、もまれるだけ。はやくホールで遊べるテクニックを身に付けたい!
 でもこの騒動でだいぶ身体の動きが軽くなってきた。私にとってこの瀬は強制運動器。

鉄橋の瀬

森囲いの瀬

 短い瀞場の後、大きな岩々の間を回り込みながらだんだん水流が速くなってきた。気分も高ぶってきた。
 眼前開けるとそこは「森囲いの瀬」。すぐに「場」に飲まれてしまった。
 直線コースに乗る前に、ちょっとした落ち込みを斜めに横断して左岸側のエディーに入り、一息付くのを常としている。いつもこの落ち込みを斜めに横断するところで、バランスを崩して沈しないか不安になってしまう。
 今回もこの不安に襲われながら、目指すエディーに向けて思い切って漕ぎ出した。

 しかし、スタート地点が下流すぎた。流れに押されてエディーの下外れに着いてしまった。初歩的なミスだ。すでに通常の思考が奪い取られている。
 必死に漕ぎ上がろうとするものの、むなしく流れに押される。いつもと違うパターンにかなり気が動揺した。この動揺は艇にも伝わり、ちょっとしたことで沈してしまうような不安定さに包まれた。

 今考えると、「ナイヤガラの滝」に対して恐がり過ぎていた。この落ち込みのホールに捕まるのを過度に恐がっていた。もし捕まっても沈脱すれば済むことなのに。

 漕ぎ上がりを諦め、下流を目指し方向転換。
 この瀬を落ち着いて漕げたことがないので、どこに何があるのか未だによく分かっていない。「ナイヤガラの滝」はどこだ!と気が焦った。この落ち込みか!次の落ち込みなのか!
 動揺のうちにあっけなく沈してしまった。そのまま続く落ち込みをロールセットポジションでクリアしようとした次の瞬間、ガツンと身体に衝撃が走った!その衝撃に浸る間もなく、すぐにロールアップした。次こそ「ナイヤガラの滝」だったのだ。痛さに耐えて無事クリア。

 「森囲いの瀬」の中間の休息地。
 親指の付け根の一部が異様に腫れあがっている。親指は動く。骨折は免れたようだ。しかし、パドルシャフトをしっかり握ることができない。脱臼の古傷を負う右肩も痛い。側頭部もズキズキする。
 まだ後半の瀬が残っている。ここも浅い。最後の落ち込みで沈してしまったがここは深くて助かった。

 みんなには大丈夫、大丈夫と答えても、もう闘志は失せていた。ヘルメットを脱ぐと側頭部が腫れている。もしヘルメットを被っていなかったら、間違いなく頭は割れていただろう。まだまだ続く難所を無事にクリアする自信がない。リタイヤを宣言。
 「これから(の人生)まだまだ漕ぐんだから、無理はしないほうがいい。」と言われた。
 この言葉にやっぱり「小歩危」は普通ではないんだと感じた。

 スタート地点に置かれた車に一人とぼとぼ歩いて帰る道すがら、こう思った。「上から眺めると、何てことないように見えるんだけどなあ。」
 「まだ小歩危やれるか?」と自問した。
 「もちろん!」と答えた。

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